味のれん ぱりぽり通信
田んぼに植えられる苗はどうやって育てられたの?
米づくりのスタート、育苗の現場をレポート
新潟の米農家さんたちは雪解けとともに苗作りの季節を迎えます。この苗作り、実は「苗半作(苗の出来のよしあしで、作柄の半分は決まる)」と言われるほどに重要な作業。秋、目指す収量に達する、いい苗を作るためには、温度管理に水管理と、細やかな気配り、様々な段取りが必要になります。今回は、田植え前の準備に忙しい4月の米農家さんの一日を見せていただくため、N.CYCLEプロジェクトに参画している新潟県長岡市の農事組合法人「上川西ガルテン」を訪ね、吉川保(よしかわ たもつ)さんと河田大(かわだ ひろし)さんにお話を伺いました。
種もみを目覚めさせる。
春の最初の作業が、稲の種子(種もみ)の準備です。どんな作業をするのか、吉川さんに教えていただきました。「まずは秋から休眠していた種もみを、目覚めさせるところから始まります」と吉川さん。いきなり、種を土に撒くわけではないのですね。まず、種もみを12℃の水に10日間浸します(浸種)。ただ水に浸しているだけでは酸素不足になってしまうため、シャワーリングといって水を循環させて、種もみに酸素供給をします。すると、胚の先端の幼芽(ようが)が、種皮を破って、ほんのわずか顔を出したのを確認したら、今度は30℃の温かい場所に置きます(催芽)。胚芽部分がハト胸状に膨らんできたら頃合いだそう。芽は出過ぎていてもよくないので、タイミングを見計らう必要があるそうです。
4月の後半、いよいよ種もみを土に撒きます。すじまき機(種まき機)を使って、土を敷いたハコの上に、溝を作り、重ならないようにまんべんなく種もみを撒きます。それをビニールハウスに並べて、30℃以上の温度を保ち、水を供給しながら、苗を成長させます。15〜20日間くらい成長させて、10〜12cm丈になったら、ようやく田植えができる苗となります。
作業現場ですじまき機での播種作業を見せていただきました。種もみがスジのついた土の上に、重ならないように、平たく、まんべんなく撒かれていきます。このようにきれいに撒いておくことで、伸び伸びと苗が育ち、また、田植え機でムラなくスムーズに作業ができることにつながるわけですね。
田植え前の土づくりは大事!
「苗づくりと平行して、土の準備もしていきます。田んぼをトラクターで耕しておかないと、苗を植えても、根が伸びないんです。そのため、作土深(耕して肥料などを混ぜた土の深さ)は15cmを確保するようにしています」と吉川さん。
土の準備といえば、肥料も必要。「米も野菜も同じですが、土壌が大事なんですよ。秋のうちにNサイクルのもみ殻燻炭を田んぼに撒いてあります。さらに、春の田起こしの際にも追加で肥料を入れるといいことがわかってきました。土地がやせると収量が減るので、よい土づくりがとても大事なんです」と吉川さん。なるほど、春の時期に丈夫な苗を作ることと、土をよくすることが大事なんですね。
「あと、田植え後の分けつも重要なんです」と吉川さん。分けつとは、種もみから出た茎の根元から、わき芽が伸びて、数十本の新しい茎が生えてくる現象。分けつで増えた新しい茎の数が、そのまま稲穂の数に直結します。適量は23〜24本と言われていますが、分けつが足りなければ、当然、収量が落ちてしまいます。「適量分けつさせるには、田植えしてからの水管理が非常に大事なんです」。稲の成長具合に合わせて、水を入れたり、水を抜いたり、稲が丈夫に育つために、水位の調整が必要なのだそうです。種もみを目覚めさせるところから始まり、土作り、田植えと、温度管理と水管理がとても細やかに行われていることに驚きました。「スタートが大事だよ」という吉川さんの言葉に重みがありました。
さまざまな品種を植える理由
今年、上川西ガルテンでは、全体の6割をしめるというコシヒカリを中心に、全部で6品種もの米を作っているのだそう。650反となにしろ広大な田んぼなので、時期の異なる品種を扱うことで、作業時期をずらしながら進められるようにしているのだそうです。「農作物ですから、気温が何度になったら何をしなければならない、と決まっているので、育苗が始まると、5月後半まで、目が回るほど忙しいですよ」と河田さん。
Nサイクルプロジェクト用の田んぼでは今年もコシヒカリを育てるそう。他にはどんな品種があるのかお聞きすると、「新潟県が発表したばかりの新品種を育てます。暑さに強い極早生品種だけど非常に美味しいんだ。我々も初めて作るので、楽しみなんです」と吉川さん。9月には稲刈りが終わっているという極早生の新品種。米農家を悩ませる猛暑対策の一手となることが期待されます。
露地育ちVSビニールハウス育ちの違いとは?
苗づくりは、まさに稲の赤ちゃんを育てる作業。米農家のみなさんは、気温、水温に気を配って、こまめに面倒を見ながら健康に育てていきます。一方、別方向の育て方として、「ビニールハウスを使わない、露地育苗という方法も試しています」と河田さん。ハウスに入れず、自然の気温のままで苗を育てるのだそう。「雨風ふいても、ほったらかしなので、たくましい子になりますね。背丈は短めで、ちょっと太目。温室育ちと自然の子供の違いみたいな、そんな印象を受ける、強くてしっかりとした苗になります。もちろん、天候によっては全滅、なんてリスクもありますけどね」。
農作業はおしなべて天候の影響は避けられません。「米作りを始めてからは、神頼みすることが増えましたね…」と河田さん。「米は一年一作だからね」と吉川さんも言います。一年に1回しかできない、新潟の米作り。農家の方々の米作りの苦労が実るような、気候のよい一年となることを祈らずにいられません。今年もどうか、おいしいお米がたくさんとれる一年となりますように!